山を越えて日本海を見たお話〈徒歩鯖街道〉
ご無沙汰しています。
ご無沙汰すぎて誰も覚えてなかったりしちゃいますかね。お久しぶりですりゃなんです。
質問箱とかいうツールで"ブログ読みたい"と言われちゃったので、これはさすがに書かざるを得ません。いやはやぼくの扱い方を心得てらっしゃるお方ですね。
ただ何を書くかが思いつきません。
正確に言えば、書くべき事柄があまりに多すぎて処理しきれません。まるでゴミが多すぎて処理しようがなかった半年前のぼくのゴミ屋敷部屋のごとく。
まあそんなこと言ってても何も書き始められないので、今回はとりあえず先月終わりに福井県の小浜というところまで歩いたお話をします。オバマが到来ではありません。小浜に到来するのです、ぼくが。
さて前説はここまでにして、以下本題。
皆さんは小浜市という町を知っているでしょうか。
福井県西部のいわゆる"若狭"という地方にあって、京都のほぼ真北に位置する日本海に面した町です。
この町、今でこそ福井県ですが距離的に見てもわかる通り京都との繋がりが深く、実際古くから獲れた魚を京都に運ぶ大拠点だった港町なんです。
そしてその小浜と京都を結ぶ道を鯖街道と言います。語源とかそこらへんはwikipediaのリンク貼っておきますので、そちらをご参照のこと。
リンク中にも書いていますが、鯖街道というのは「東海道」のような1つの決まった道を表すものではなく、若狭と京都とを結ぶ何本もの道(写真中の若狭街道、鞍馬街道etc)をまとめて鯖街道と言います。
そして今回ぼくが歩いたのが鯖街道の中でも鞍馬街道と呼ばれる道、京都から鞍馬、久多、小入谷、根来と通って小浜に抜ける、京都小浜間での最短ルートです。しかし最短ルートでありながら山を突っ切る形になるので今は専ら登山道としてしか残っていません、そんな道を歩いていきます。
いやなんで歩くのかって、そこに道があるからです。歩けば着く、自明だけど歩いてみないとわかりません。道は歩くことで道足りえるのです。(?)
本題に入ったつもりがまた説明だらけになっていました。ヘッドライト、火器、前日に買った山と高原地図、朝買ったアクエリ2本とカップ麺パンをカバンに詰め込んでやっと歩き始めます。あ、細かいルートは一番下の方に示したマップを見てください。
4/21 AM8:55 花脊峠 0歩
初っ端からバス移動。
京都の市街から鞍馬すっ飛ばして花脊峠まで行っちゃいました。実はこの区間は以前歩いていて、舗装路の山道で正直しんどいだけなのでバスワープしました。さっきそこに道があるから歩くとか言った気がしますね、大変申し訳ありません。なにとぞ。いやだって歩いたら3時間ずっと登り坂な道をバスだと1時間、やっぱバスだね。
※ちなみに一部の方は知っていると思いますが、このバス路線は京都バスの32系統という路線で、京都は出町柳の駅から左京区の北の果てにある広河原という所まで行くローカルバス路線です。始まりから終わりまでずっと京都市左京区内を走るのに、終点まで2時間ほど、片道1000円以上かかる上、鞍馬より北は離合もできないヘアピンだらけの狭隘な峠道を謎メロディ流しながらゆっくり進みます。一部区間は電波圏外です。京都の町中からバス1本で秘境にたどり着けるバス路線、物好きな皆さんはぜひどうぞ。
AM10:00 大原大見町 7000歩
花脊峠から山道1時間歩いて坂下りた先にあったこれぞ「里」。人家は見た限り10軒弱。ちなみに電波は圏外、どうやってもアンテナ1本も立たない。にゃんぱすーなアニメよりもこっちの方が確実に田舎なのん。
AM10:40 大原尾越町 11000歩
これぞ「里」第2弾。相変わらず電波は圏外なのだが、見つけたのは2018年にもなって公衆電話の手書き看板である。素通りしてしまったけどいったいどんな電話が待っていたのだろうか……?
AM11:00 久多市有林管理舎 13000歩
なんかもう完全に登山になってきた。ただ京都市さん、これだけ言わせていただきたい。
可能な範囲でいいですけどもうちょっと登山道の管理をしてください。ホント。いや、下の写真みてください。
坂登り続ける最中にこの道現れたら、皆さんどう思います?
これね、正解こっちなんですよ。
わかるかーーーーーっ!!!!!!!!
地図「そろそろ左折だよ」
ぼく「左側に道がないんだが……」
地図「もう通り過ぎたよ」
ぼく「は?(戻る)(斜面を上がる道を見つける)」
ぼく「わかるかーーーーーっ!」
AM11:50 八丁平 18000歩
京都市の策略により15分ほど彷徨って、やっとの思いで坂登りきったら謎の心地よい平原が。八丁平という高層湿原らしく、京都市により乱された心が安寧に向かうすごく落ち着くところでした。アクセスは凶悪だけど。
PM0:20 オグロ坂峠 19000歩
見てこの「猿でもわかるみたいな謳い文句掲げる参考書に参考例として載せられる」レベルのあまりに標準的な峠、峠の中の峠。お地蔵さんあるし景色が良いのでポイント高い。
ただここからの下り坂(オグロ坂)、数年前の台風のせいらしく崩落は当たり前、その現場は未だガレまくり、踏み跡はいくつもわかれては合流し、もちろん橋は落ちてるので無理やり渡渉とかいう、それはもう記すのも烏滸がましくなるような惨状、もとい状況でした。頼むから京都市さんもうちょっと…………。
PM1:30 久多 26000歩
オグロ坂を下りきってたどり着いたのが、京都市左京区最奥の町こと久多。京都で大雨が降った場合まず最初に避難準備情報が出る地域。花脊峠以来4時間ぶりに携帯の電波が通じ、交番もあれば小さな医院もある。え、都会だ。まあ小学校は廃校で郵便局は簡易化してるので、結局田舎なことには変わりがないのん。これでも一応政令指定都市内です。
PM3:00 県境 32000歩
花脊峠スタートから6時間、ついに滋賀県突入です。ここから先は滋賀県の北の高島市、その山奥に位置する旧朽木(くつき)村、その中でも村の中心から山を一つも二つも越えた針畑郷という、つまり滋賀県内トップレベルの田舎です。久多もそうだけどどんなに山奥行っても定住してる人見ると落ち着くと同時に憧れる。すごいよなぁ。
PM3:15 小川針畑橋バス停 34000歩
わかってほしい。鞍馬以来半日ぶりに自動販売機を見つけたときの感動を。CCレモン缶30秒で飲み切ってしまったぼくの興奮度を。こんな写真撮るくらいにはテンションが上がったんです。
PM5:20 朽木西小学校 47000歩
見てくださいこの周りの景色。すごく好きです、この景色。余生はこんなところで過ごしたい。ここの小学校、僻地校(先生に特別な手当が出る)に指定されており、去年時点で全校生徒3人だったらしい。リアルにゃんぱす。うちとしては里の学校が長く残ることを願うばかりなのん……。
PM19:15 小入谷バス停 50000歩
最終バスが行くのを近くの交流センターで1時間半ほど待って本日の宿に入室。布団持ち込み、居住性良し、川のせせらぎと謎のポンプの音が聞こえる。電波はきっちりLTE。外見ると何回も獣と目が合うのが気になるが良いお宿。1泊0円。
ちなみに晩飯はカップヌードルカレー味。ゆるキャン△はいいぞ。
AM6:00 小入谷バス停出発 50000歩
日の出を待って出発。前日は暗くてわからなかったけど、小入谷は民家の屋根に茅葺が残る美しい集落でした。
AM6:55 根来坂峠 56000歩
このルートでラストの峠、標高830m。読み方は"ねごりざかとうげ"。これより南は近江の国で北は若狭の国、つまり福井と滋賀の県境。これを過ぎればあとは日本海まで下るだけ。ひゃっほい
AM8:45 旧上根来小学校 65000歩
峠の滋賀県側の集落が小入谷で、福井県側の集落が上根来。実は上根来、現在住民はいないんですけど元住民が定期的に清掃作業に来ているのでさながら現役の集落のような様相を呈しています。その外れにある綺麗な木造校舎の旧上根来小学校も1985年の廃校のまま。85年ってことはつまりバース掛布岡田の年に廃校になったわけだけど、次の阪神の日本一はいつなんですかね。
※2019年の2月に再訪したところ校舎は跡形もなくなっていました。取り壊されたのか自壊したのか、雪が多い地域だからしょうがないかな……。
AM10:00 鵜の瀬 72000歩
かなり下界に降りてきて、小入谷以降通じなかった電波も復活。ここは鵜の瀬と言って名水100選にも選ばれている(らしい(実際すごく美味しかった))ところで、一人水遊びしてました。川入ったり水切りしたり。すいませんでしたねお一人様で。
ところで皆さん、東大寺の修二会ってご存知でしょうか。知らない方はスルーしてくれて構いません。その修二会で行われるお水取り(観音様に供える香水を汲む行事)、実はこの鵜の瀬から"水が贈られる"という由来で行われている行事なんです。逆にこの鵜の瀬では毎年、お水取りの10日前に水を取って送る「お水送り」が行われているそうで。
そのお水送りを行うのが、鵜の瀬から下流にしばらく行ったところにある(下に続く)
AM10:50 神宮寺 75000歩
この神宮寺です。この神宮寺、名前の通り神社と寺のハイブリッドで、まずもって寺なのに本堂にしめ縄飾られてるし、しめ縄の向こうには薬師如来様がいるし、仏様なのにお参りは2拍1礼だし、そのくせして入口には仁王像がいます。すごく日本らしいごちゃまぜ思考。この感覚が、神仏習合。
AM11:20 若狭彦神社 77000歩
AM11:45 若狭姫神社 80000歩
鯖街道walkも最終盤、小浜まであと3km、遠敷(おにゅう)の町まで下りてきました。ここにあるのが上に書いた2つの神社。祀る神は違いますが彦を上社、姫を下社とした1つの神社として扱い、そして二つ合わせて若狭国の一宮。ちなみに写真は若狭彦神社の方。この近くには若狭国の国分寺もあり、古くから地方の中心地だった名残で古い神社とか遺跡が残ってるんだそう。
PM0:40 鯖街道起点 85000歩
京都出発から1泊込みの歩行時間12時間かけてたどり着いた小浜市街のど真ん中、いづみ町商店街の中にあるのがこの鯖街道起点の碑。ぼくは逆から行ったので起点が終点になっちゃいましたね。横には小っちゃいながらも鯖街道資料館もあります。
そして最後に
着いたーーーーーーーーーー!日本海!
というのが今回のぼくの歩き旅でした。あ、ちゃんと小浜で鯖を買って帰りましたよ。なんてったって鯖街道ですから。まあ当然地酒も買いましたけど。
それは置いといて、下にあるのが今回のルートとポイントです。
え、オチがないだって?許してくださいよ、こちとら歩くだけで精いっぱいだったんです。いやホンマに。
じゃあここからは感想と気付いたことをいくつか。
一つ目。
このルート上、特に久多と朽木の辺りはやたら"しこぶち"という名前の神社が多いんですよね。漢字は志古淵神社だったり思古淵神社だったり、、、。なんか地域特有の信仰なんですかね。川沿いが多かったので水の神様?
二つ目。
久多~針畑は旧来のルートが廃道と化しているらしいので車道を迂回したんですけど、それ以外でも道がわかりにくい場所が多くてかなり迷いやすい。ルートファインディングは重要。
三つ目。
街道筋を歩いているのに現れる町(集落)がどれも宿場町じゃないんですよね。峠の直前後は往来の補助的な役割も持ってそうでしたが、道中の町はほぼすべて農村。まあ片道1日ほどの街道には宿場町は要らないんですかね。
四つ目。
この看板が花脊から小浜まで至る所にあるんですよね。京都中心部からも小浜からも離れた久多や針畑にもいっぱいあったし、宿場町じゃなくてもあそこら辺の町はやっぱり鯖街道があってこその町だったんだろうなと。歩いてたら地元の方に「鯖街道歩いてるの?」って聞かれるし、重要な道なんですね。
あともし鯖街道を歩きたい人がいたら助言をいくつか、ちゃんと地図を買っていきましょうということと、数か所渡渉があるので靴の防水をしっかりしてくださいということ、補給ポイントが少ないので食料・水はしっかり持っていきましょうの3つです。
最後に日記的に近況をいくつか。この前ついにとらドラ!というアニメを全話見ることに成功したんですけど、代わりに精神を根こそぎ持っていかれそうになったので、今はけいおんを見ながらうんたん♪してます。
あと昨日夢喰いメリーとかいう漫画を高校以来に読んだんですけど、今読むとすごく佐倉綾音ですね。佐倉綾音以外思い浮かばない。
あと最後の最後に、ゆるキャン△Blu-ray2巻はもう発売されましたよ?皆さん買い忘れてませんか?
それでは